東京大学公開講座「特異」
2006年度開講

東京大学公開講座「特異」

開講の挨拶
濱田 純一

動画

「特異」という言葉から、皆様はどのようなことを思いつくでしょうか。何か特殊なことばかりで自分自身にそれほど直接に関係がないことだと感じるかも知れません。しかし、この言葉があてはまる事象が、思った以上に多く観察されているのです。たとえば、太陽系の惑星の中で唯一、地球においてのみ生物が存在しているらしいことはそれにあたります。地球に特異的に生物が存在する、と表現されます。身の回りにも多くの「特異」が存在します。その典型的なものとして、特異体質は一般的にはごく限られた人数の人が、ある薬物や食物を摂取した時にアレルギーやショックなど強い有害反応が現れる体質のことを指しています。原因がまだ完全に分かっておらず、医療上解決すべき大変重要な問題になっています。以上に述べたものは少数の「特異」の実例ですが、このような特異的な事象が起こる原因を探ることは、自然科学において極めて興味深い研究課題であり続けてきました。

自然科学的事象のみならず、社会科学的事象においても「特異」ということがしばしば焦点になります。人々の通常の想定範囲を越えるような特異な才能を持つ人は、なにがしの天才と呼ばれます。天才とはどんな人達なのか、どのようにして育ってきたのか、いつも何を考えているのか、強く興味を惹かれるところです。芸術、法律、宗教、経済にも様々な「特異」現象を見ることができます。これらは、それぞれの分野で特別の関心と分析の対象となってきました。

ある限られた条件の下で特別な事象が起こることを「特異」と呼ぶことができると思います。その条件や原因を調べることは大変興味深く、また、一般的な法則の理解にも役立つと考えられます。この公開講座では、色々な分野における「特異」現象をあぶり出し、その魅力や危険について様々な角度から考えてみたいと思います。

講師紹介
President
※所属・役職は登壇当時のものです。

おすすめの動画