概要
「知は力なり」とは、十六世紀末にイングランドの哲学者、フランシス・ベーコンが口にした言葉です。この発言から四百年がすぎたいま、知の担い手である大学ほど、世に流布するイメージでは、「力」と遠いものはありません。 しかし、この「力」とはいったい何でしょうか。分子の運動から、身体のはたらき、人と人との交渉、さらには国際紛争まで、この現実世界は、すべての場面で、さまざまな「力」の交錯によってなりたっています。地震で大地が揺れるようすや、身体の運動や、武器の数量はいちおう目に見えますが、その背後にある、力のはたらきは、なかなか見えるものではありません。
目に見える現象を、ただ追いかけて眺めるだけなら、それは誰もができることでしょう。単なる報道や評論と学問との違いは、ここにかかわります。現実の裏にある力の流れや、あるいは大きすぎ、あるいは小さすぎて観察至難な力の働きについて、解明し、その制御を考えることは、人文科学・社会科学・自然科学を通じて、学問の「知の力」にこそ任された課題です。
今回の公開講座では、自然と社会と文化、すべての領域に遍在し、ものごとを動かしている「力」というものについて、文系・理系を通じた多くの学問分野から、解明を試みます。東京大学の創立百三十周年にふさわしく、大学の総合知を示す格好のテーマによって、わたくしどもの達成したところを、ひろく一般の方々に供したいと思います。
講師紹介

井上 正仁
法学政治学研究科
学歴 | |
1971年 | 東京大学法学部(第1類)卒業 |
職歴 | |
1971年 | 東京大学法学部 助手 |
1975年 | 東京大学法学部 助教授 |
1978-80年 | ハーバード大学ロースクール,カリフォルニア大学バークレー校ロースクール,アウグスブルク大学法学部 各客員研究員 |
1986年 | 東京大学法学部 教授 |
1988-89年 | カリフォルニア大学バークレー校ロースクール 客員教授 |
1990-91年 | 東京大学総長補佐 |
1991年 | 東京大学法学政治学研究科 教授 |
1994年 | ケルン大学法学部,ワシントン大学ロースクール(シアトル)各客員研究員 |
1999-2001年 | 司法制度改革審議会委員 |
2002-04年 | 東京大学評議員 |
2004-05年 | 東京大学大学院法学政治学研究科副研究科長・法曹養成専攻(法科大学院)専攻長 |
2007年 | 東京大学大学院法学政治学研究科長・法学部長 |
研究テーマ |
刑事訴訟法 |
最近の主な著書 | ||
強制捜査と任意捜査 | 有斐閣 | 2006年 |
HP (ホームページ) |
http://members3.jcom.home.ne.jp/masinouye/index.html |