特異における多様性-法・経済・宗教-

法における「特異」の位置

概要

民事法・刑事法等の分野で責任能力や過失認定などの基準を設定する場合には、法は「平均人」をモデルにした人間像を前提にしている。他方、個の尊厳や幸福追求権を謳う憲法は、人々がそれぞれ他者とは異なった「個性的な生き方」を追求することを人権として保障している。また、法は紛争処理において判断基準の定型化を志向する一方で、事案の特殊性を考慮した具体的妥当性の確保も「衡平」の名で要請している。本講演では、法と「特異なもの」とのこのような両面的・両義的関係をどのように理解し評価すればよいかについて、若干の考察を加えてみたい。

 

I 「特異」を排除する法

(1) 過失責任における平均人モデル

(2) 損害賠償額算定基準の定型化

(3) 猥褻性判断における正常人モデル

2 「特異」を包容する法

(1) 憲法における「個人の尊厳」の基幹的位置

(2) 立憲主義的人権保障システムー「立憲民主国家」であることの意味

(3) 憲法の理念と現実のギャップ

3 排除さるべき「特異」と包容さるべき「特異」の識別原理

(1) 法の内在的理念としての正義

(2) 実践的練習問題

講義実施日:
2009年5月16日
対象:
一般
分野:
法律/政治

講師紹介

井上 達夫

法学政治学研究科
 


学歴
1977年 東京大学法学部卒業

職歴
1977年 東京大学法学部助手
1980年 東京大学教養学部助手
1983年 千葉大学法経学部助教授
1991年 東京大学大学院法学政治学研究科助教授
1995年 東京大学大学院法学政治学研究科教授

研究テーマ
公共性論
法の支配論
立法学
立憲民主政論
世界正義(Global Justice)

最近の主な著書
「哲学塾 自由論」 岩波書店 2008年
「岩波講座憲法1 
立憲主義の哲学的問題地平」
岩波書店 2007年
「公共性の法哲学」 ナカニシヤ出版 2006年
「法という企て」 東京大学出版会 2003年
「普遍の再生」 岩波書店 2003年
「現代の貧困」 岩波書店 2001年

HP (ホームページ)

講義資料